農作物を育てる上で温度管理は重要であり、ビニールハウス栽培でも当然ながら適切な温度調節が必要です。ビニールハウスの遮熱対策に有効な遮熱シートの効果や、遮熱シートを利用する時の注意点などを解説します。
農作物は品種によって栽培に適した季節が決まっているように、温度が農作物の生育に与える影響は極めて大きなものとなります。そのため日差しの強い夏場などでビニールハウス内の温度が上がりすぎると、農作物の生育不全を引き起こしたり、深刻なトラブルに発展したりする恐れも増大するでしょう。
また特にビニールハウス栽培は通気性が制限されるため熱がハウス内にこもりやすくなるという性質もあり、必ず遮熱対策を実施しておかなければなりません。
ビニールハウス栽培において遮熱対策が重要となる理由として、農作物への影響だけでなく、ハウス内で農作業へ従事する人への健康被害を防止するといったものが挙げられます。
農作業は長時間の作業を必要とすることも多く、また肉体に対する負担も少なくありません。そのような状況でさらにハウス内の温度が過剰に高い状態となった場合、いよいよ熱中症など深刻な健康リスクへつながることは無視できません。
作業中の水分補給などはもちろんとして、作業環境の健全化として遮熱対策が不可欠です。
遮熱シートをビニールハウスへ施工することで、ハウスの温度上昇を引き起こす原因である「輻射熱(放射熱)」の影響を抑制可能となります。
輻射熱とは太陽の光などが物体へ当たった際に伝わる熱のことであり、基本的にビニールハウス内の温度は外の気温と太陽光などによる輻射熱の相乗効果によって上昇します。
外気温は個人でコントロールできませんが、遮熱シートは輻射熱による影響を調節することでハウス内の温度管理に貢献する遮熱対策であり、遮熱シートを適切に施工することで夏の直射日光が厳しい時期でも農作物を高温から守る助けになってくれるでしょう。
ハウス内の温度を適正範囲に調節することで恩恵を得るのは農作物だけでなく、ハウス内で農作業へ従事する人も同様です。
農作業の最中に温度が上がりすぎると熱中症など危険な健康被害を招きやすくなるため、労働災害や深刻な事故を防止するために遮熱シートは効果を発揮します。
また遮熱シートは夏の暑さを緩和するだけでなく冬の寒さにも有効である点が重要です。寒い環境での農作業は心身に大きなストレスとなる上、風邪など病気のリスクも増大させるため、健全な労務環境を整える上で遮熱シートには通年の有用性があります。
ビニールハウスの内部の温度が上昇すると、農作物を植えている土の温度が上昇し、水分の蒸発を招いてハウス内の湿度も上昇します。これにより湿度は高いのに土が乾燥しているといった状態を引き起こすことが問題です。
遮熱シートで温湿度の調節を適正化することにより、湿度を正常範囲に保ちながら、土の乾燥を防いで潅水負担も軽減できます。
遮熱シートは農作物へ降り注ぐ日光や紫外線の量を抑制するため、農作物の生育時期によっては遮熱シートがかえって栽培を邪魔してしまう可能性もあります。
そのためビニールハウス栽培で遮熱シートを使用する場合、まずは栽培している農作物の生育サイクルや適正環境をきちんと把握した上で、季節や時期といったタイミングに合わせて遮熱シートを撤去することも必要です。
また使用する遮熱シートの性質が栽培対象の農作物やハウス環境に合致しているかも考慮しなければなりません。
遮熱シートと一口に言っても様々な製品が販売されており、シートによって遮熱効果に差があるだけでなく、遮光性を備えているか否かといった性質の違いも存在しています。つまりビニールハウスへ盲目的に遮熱シートを施工してしまうと、必要以上にハウスの温度変化が抑制されたり、農作物の生育に必要な日射量を確保できずに生育不良を引き起こしたりといったリスクが増大します。
どのような遮熱シートが適しているかは農作物やビニールハウスの構造、栽培地域や気候などの条件によって変わってしまうため、自身が栽培する農作物に合わせたシートを選ぶことが肝要です。
上述した通り、遮熱シートは一度ハウスへ施工すればずっとそのままというものでなく、必要に応じて撤去したり再設置したりといった対応が求められるアイテムです。そのため遮熱シートを選ぶ際には価格だけでなく、繰り返しの使用に耐える耐久性や長期の利用に耐える耐候性、また作業のスムーズさに影響する軽量性などトータルのバランスを考慮してください。
日光を遮るネット状の遮熱資材であり、屋外に出てビニールハウスの上からネットをかぶせるタイプと、ハウスの内側でネットを設置する内張タイプがあります。遮光性に加えて、ホワイトベースの遮熱ネットは吸熱・蓄熱しにくく遮熱効果が高くなります。
カーテンタイプの遮熱資材はビニールハウスの内部に設置するものであり、人がハウスを出入りする際などにハウス内の空気が外へ流れ出て温度が変化するといった影響を抑制するアイテムです。カーテンの開閉装置と併用することで温度調節をさらに細かくできる点もメリットです。
ビニールハウスそのものに外側から遮熱効果を持った塗料を吹き付ける液体状の遮熱資材です。シートやネットのように取り外しできるものでありませんが、一度の施工で1~半年程度の遮熱効果を発揮します。また、薬剤の希釈倍率を変えることで遮熱・遮光効果を調整可能です。
ビニールハウスへ貼り付けるフィルムタイプの遮熱材です。
※参照元
日刊工業産業新聞公式サイト(2024.04.17付ニュース)(https://biz.nikkan.co.jp/sanken/shingizyutu/36shingizyutu.html)
※このサイトで紹介している会社は、Googleで2024年3月30日時点で「遮熱工事」で検索し表示される会社のうち以下の条件に当てはまる会社
➊遮熱工事の具体的な内容(遮熱材や工法の情報)が公式サイトに記載のある会社
➋施工場所の業務や工場の稼働などに影響のない工法(建物内ではなく「屋根の上」で行う工法)
➌同じ遮熱材・工法の場合、代理店は除外、自社が大元となって展開する商標登録元・特許技術取得元・販売元の会社12社です。
※その中で、特許技術取得、商標登録等されているオリジナルの工法(自社開発の工法)で、代理店の数や施工事例等から実績が多いと判断される会社を紹介。(上記の会社の中ではこの3工法となります)