工場の運営において光熱費の多くを占める毎月の電気代。工場の電気代を削減する方法を考えるには、まず電気料金の仕組みを知り、どこに電気代がかかっているかを可視化することが大切です。本記事では、工場の電気代を削減する方法を、電気代の算出から考えていきます。
高圧電力を使う工場では、電気代は基本料金と電力量料金、再生可能エネルギー発電促進賦課金の3項目の合算が電気料金となります。
それぞれの料金の概要と計算方法は以下の通りです。
基本料金とは、電力会社が契約プランごとに設定している固定料金を指します。電気の使用量や使用の有無にかかわらず発生する固定費で、以下のように算出します。
基本料金単価とは、各電力会社が設定している1kWごとの単価です。契約電力は毎月使える電力量の上限で、過去1年間の最大需要電力をもとに決まります。
カ率とは、供給された電力に対し実際に消費された電力の割合です。カ率が85%以上になると基本料金が割引され、逆に下回まわると基本料金が割増になります。契約電力とカ率は、電気料金明細書で確認できます。
使用した電力量に応じて変動するのが電力量料金です。電力量料金を求めるには、以下の計算式が使われます。
電力量料金単価とは1kWの1時間あたりの料金単価で、使用電力量とは1kWの電力を1時間使ったときに使用した電力量です。電力量料金単価と使用電力量は、どちらも7~9月は夏季、10~6月はその他季と、月によって変動します。
燃料費調整額とは、燃料費調整制度に基づいて決定される発電にかかる燃料費です。算出に必要な燃料費調整単価は、各電力会社の公式サイトで確認できます。
太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを普及・促進するための費用で、毎年の価格は経済産業省によって決められています。1か月の使用電力量と単価を掛け合わせて決定され、電気を使った側が費用を支払わなくてはなりません。
※引用元:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価を設定します」
(https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240319003/20240319003.html)
次に、工場にかかる1か月の電気代を計算してみましょう。ここでは、高圧電力A・契約電力500kW以下の工場を想定して電気料金を算出します。
計算に用いるデータは以下の通りです。
基本料金単価 | 1,200円/kW |
---|---|
契約電力 | 150kW |
力率 | 90% |
使用電力量(その他季) | 10,000kWh |
電力量料金単価(その他季) | 16円/kWh |
燃料費調整単価 | -3円/kWh |
再エネ賦課金単価 | 3.49円/kWh |
使用電力量と電力量料金単価は、夏季(7月〜9月)と、その他季(10月〜6月)で異なります。計算する際には、各電力会社の公式サイトや電気料金明細書を確認してください。
今回は「その他季」を想定して算出します。
基本料金の計算式に当てはめると、以下の金額が算出されます。
電力量料金の計算式で算出される金額は以下の通りです。
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、その年の再生可能エネルギー発電促進賦課金単価と使用電力量を掛け合わせると算出できます。
基本料金、電力量料金、再エネ賦課金を合算すると、1か月の電気料金は以下の通りです。
単価が決まっている基本料金を削減することはできませんが、電気使用量を削減できれば毎月の電気代を削減できる可能性があります。電気使用量を見直すために、どこに・どのくらいの電力を使っているかを調べましょう。すると、消費電力の大きい設備や集中稼働で電力を多く使っている時間帯などを把握できます。
さらに、IoTを導入して電気使用量をモニタなどに表示できれば、使用電気量をより分かりやすく「見える化」できます。電気使用量を常に可視化しておくことで、電気代削減のための改善行動をとりやすくなります。
これまで契約していた電力会社を見直し、新しい電力会社に切り替えることによって電気料金を削減できる可能性があります。
電力自由化によって参入した新電力会社は、その多くが大手電力会社よりも安い料金プランを提供しています。
中には風力発電やバイオマス発電など、太陽光発電以外の再生可能エネルギーを調達しているところもあり、カーボンニュートラルにも寄与できます。
電力会社の切り替えは手続きのみで完了するため、特別な設備投資も必要ありません。導入コストをかけずに電気代の削減が可能です。
工場の屋根や敷地内の空いているスペースなどに、太陽光発電を取り入れるのも一手です。
電気代は夜間よりも日中のほうが割高になります。工場が稼働する日中の電力を太陽光発電に切り替えれば、電気代を大きく削減できる可能性があります。
太陽光発電は、災害などで電力会社からの電力供給が止まった際の備えにもなります。災害時や非常時も工場の稼働停止を防げるため、BCP対策としても有効です。
デマンドコントローラーとは、使用電力のデマンド値(最大需要電力)を抑えることで、基本料金の削減を目指すシステムです。
電力を自動制御できるわけではありませんが、予め設定した上限を超えそうになった場合、アラートが出る監視機能が搭載されているものもあり、使用電力の最大値を抑えるのに効果的です。
特に、工場など高圧電力契約を結んでいる業務用電力の場合、高い節電効果を発揮します。
工場の空調にかかる電気代を節約できれば、毎月の電気代削減につながります。空調の効率アップにおすすめなのが、遮熱シートの導入です。
工場の屋根や壁に遮熱シートを設置すれば、太陽からの輻射熱を遮ることができるため、工場内に熱がこもらなくなり空調の効率がアップします。また、建物の温度低下を防ぐ働きも持つため、暖房の使用を抑えたい寒い時期にも効果的です。
空調の設定を弱めにしても工場内が適温になりやすく、電気代削減に大きく寄与します。
※参照元
日刊工業産業新聞公式サイト(2024.04.17付ニュース)(https://biz.nikkan.co.jp/sanken/shingizyutu/36shingizyutu.html)
※このサイトで紹介している会社は、Googleで2024年3月30日時点で「遮熱工事」で検索し表示される会社のうち以下の条件に当てはまる会社
➊遮熱工事の具体的な内容(遮熱材や工法の情報)が公式サイトに記載のある会社
➋施工場所の業務や工場の稼働などに影響のない工法(建物内ではなく「屋根の上」で行う工法)
➌同じ遮熱材・工法の場合、代理店は除外、自社が大元となって展開する商標登録元・特許技術取得元・販売元の会社12社です。
※その中で、特許技術取得、商標登録等されているオリジナルの工法(自社開発の工法)で、代理店の数や施工事例等から実績が多いと判断される会社を紹介。(上記の会社の中ではこの3工法となります)