世界的な温暖化に伴い、毎年のように酷暑に見舞われている昨今。最近では夏季でなくても暑さが厳しいと感じる日もあるほどです。暑さに弱い家畜を守るため、畜産農家はどのような対策を講じるべきなのでしょうか。本記事では、畜産農家の遮熱対策が必要な理由や具体的な対策方法を解説します。
牛や豚、鶏などの家畜動物は、暑さに弱い傾向にあるため、畜舎内の遮熱対策は欠かせません。
家畜動物を高温な環境下に置くと、体温の上昇や酷暑によるストレスから家畜の生殖ホルモンに乱れが生じる可能性があると言われています。
食用家畜の場合、暑さによるストレスから食欲が落ちて痩せてしまう、鶏の場合は卵を産めなくなってしまうといった影響を引き起こします。乳牛の場合は乳量が下がり、ミルクを絞れなくなるおそれも。
そうなると、畜産の品質や生産量に悪影響を及ぼします。家畜動物の健康を守り、品質や生産量を安定させるためにも、畜舎内を適温に保つ遮熱対策は重要です。
畜舎の屋根は、建物の構造上、日射による輻射熱(ふくしゃねつ)の影響を受けやすいとされています。
一般的に、畜舎の屋根は薄い金属の板を折り曲げて加工した「折半屋根」である場合が多く、断熱性能が低いためです。金属製の素材でできていることから輻射熱を吸収しやすく、畜舎の温度上昇を助長する傾向にあります。
屋根からの輻射熱の影響を受けないためには、熱を反射する工夫を行う、屋根の熱を冷やすといった対策が必要です。
高温の畜舎内で起こるのは、家畜への影響だけではありません。作業員の体調不良や熱中症の原因となり、作業員の健康をおびやかす可能性もあります。
とくに輻射熱は電磁波によって伝わることから、体感温度を上げるとも言われています。長時間作業を続ければ、さらに熱中症のリスクが高くなるでしょう。作業員の健康と安全を守るためにも、畜舎の遮熱対策は不可欠です。
遮熱対策を施していれば、夏場の室温上昇を抑えられます。また、冬は室内の熱が外に行くのを防いでくれるため、寒さ対策としても有効です。
遮熱対策として代表的な方法のひとつが、日差しを遮るために使う遮光ネットの設置です。遮光ネットを設置すれば、輻射熱の影響を抑えられるほか、畜舎の室温上昇を抑える効果があります。
日差しの侵入をネットが防いでくれるため、畜舎の入り口や屋根裏など、日の当たりやすい場所に設置すると良いでしょう。
霧状のミストで畜舎内を冷却するミスト冷房を設置するのも効果的です。ミスト冷房は、畜舎内の空間を気化熱によって冷却します。家畜を暑さから守れますし、人も快適に作業できるようになります。
暑すぎる畜舎内は、家畜がストレスからホルモンバランスを崩しやすくなります。発情周期が乱れると受胎時期が遅れ、次年度の生産量にも影響を与える可能性あるため注意が必要です。
畜舎の屋根にスプリンクラーを設置してノズルから水を散水すれば、水の力で屋根の熱を冷却し、輻射熱からの影響を抑えられます。水が屋根の熱を気化することによって、熱を下げる効果があるからです。
畜舎の屋根に取り付ける場合、散水チューブを屋根に這わせるように設置します。屋根からポタポタと垂れる程度の水量で効果を得られるので、水道コストが急激に上昇する心配もありません。
屋根の温度上昇を解消できる遮熱シートの施工は有効な対策です。畜舎の屋根は日射の影響を直接受けやすい折版屋根でできているため、屋根の温度が上昇する大きな要因のひとつです。屋根の温度が上がると畜舎内に熱がこもり、室温の上昇につながります。
効果的に遮熱したいなら、屋根の上と屋根下の2か所にシートを施工するのがおすすめです。屋根の上では輻射熱を反射して屋根の温度上昇を防ぎ、屋根下のシートは屋根からの熱が室内に影響を与えるのを防ぐ効果があります。
畜産農家が遮熱対策で遮熱シートを設置する際、国の補助金を受けられることがあります。遮熱対策を検討しているなら、補助金や支援制度についても調べておきましょう。
補助金制度には予算や期限があり、公募時期を過ぎたり予定総額に達したりすると、応募が打ち切られてしまいます。
遮熱対策に関する補助金は、農林水産省や畜産産業振興機構が実施しています。遮熱対策を行う前に、これら機関から募集の案内があるかを事前に確認しておくと良いでしょう。
参照元:農林水産省「畜産農家・関係団体に対する支援」(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/l_zigyo/index.html?_fsi=LgxvySQl)
独立行政法人農畜産業振興機構「補助事業に係る事業実施主体候補者の公募について」(https://www.alic.go.jp/topics/support.html?_fsi=LgxvySQl)
遮熱対策は畜産農家にとって重要な課題ですが、夏の暑さ対策に備えてやみくもに遮熱すれば良いというわけではありません。家畜にはそれぞれ快適に過ごせる適温があり、家畜の種類によって異なるからです。
例えば、同じ牛でも乳用牛の適温は4℃~20℃なのに対し、肉用牛の適温は10℃~20℃と適温の範囲に違いがあります。
遮熱対策の際には、畜舎内の動物にとって適温かどうか、家畜が過ごしやすい温度かどうかを意識したうえで対策することが大切です。
参照元:J-Stage「暑熱ストレスが産業動物の生産性に与える影響(PDF※表1)」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlac/5/Supple/5_238/_article/-char/ja/)
※参照元
日刊工業産業新聞公式サイト(2024.04.17付ニュース)(https://biz.nikkan.co.jp/sanken/shingizyutu/36shingizyutu.html)
※このサイトで紹介している会社は、Googleで2024年3月30日時点で「遮熱工事」で検索し表示される会社のうち以下の条件に当てはまる会社
➊遮熱工事の具体的な内容(遮熱材や工法の情報)が公式サイトに記載のある会社
➋施工場所の業務や工場の稼働などに影響のない工法(建物内ではなく「屋根の上」で行う工法)
➌同じ遮熱材・工法の場合、代理店は除外、自社が大元となって展開する商標登録元・特許技術取得元・販売元の会社12社です。
※その中で、特許技術取得、商標登録等されているオリジナルの工法(自社開発の工法)で、代理店の数や施工事例等から実績が多いと判断される会社を紹介。(上記の会社の中ではこの3工法となります)