冬など気温が下がった時期、同じようにエアコンを使っていても戸建て住宅よりマンションの室内の方が寒いと感じるケースがあります。ここではマンションが寒いと感じられる理由や、具体的な寒さ対策などについてまとめました。
マンションが寒いと感じられる理由の1つとして、日当たりの悪さが考えられます。
マンションは構造や築年数によって断熱性能に差があり、それによって寒暖差が大きくなることもありますが、日当たりの悪さは環境的要因としてどのマンションでも起こり得る問題です。
特に低層マンションで近隣に日差しを遮るマンションやビルがあったり、間取りとして窓の大きさや向きが悪かったりすると、太陽の光がマンションの外壁や室内に届かなくなって気温が下がることもあります。
現在は建築資材の品質も日進月歩で向上しており、比較的低コストで優れた断熱性能を備えている断熱材も増えています。しかし、築年数が古いマンションなどを中古で購入したような場合、性能の低い断熱材が使用されていたり、そもそも断熱材が使われていなかったりといったケースも珍しくありません。
断熱性能が低いマンションは屋外の気温や寒暖の影響を受けやすくなり、特に冬場や夜間は室内の温度が下がって寒いと感じられることもあるでしょう。
特に1979年に省エネ法が制定される以前に建てられたマンションでは断熱材が入っていないことも考えられます。
※参照元:経済産業省資源エネルギー庁|省エネ法の概要(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/index.html)
※参照元:NTT東日本|【知っていますか?省エネ法】今さら聞けない省エネ法について(https://business.ntt-east.co.jp/service/okudakeiot/column/column21_syouenehou/index.html)
マンションの構造に広く用いられているコンクリートは、その物理的な特性が冬場の室内の寒さに影響を与えることがあります。コンクリートには熱に関する二つの主な特徴があります。一つは、木材などの断熱性に優れた建材と比較して熱を伝えやすい、すなわち「熱伝導率が比較的高い」という点です。このため、冬に外気が冷え込むと、その冷たさがコンクリートの壁や床を通じて室内に伝わりやすく、同時に室内の暖房で得られた熱も外部へ逃げやすい傾向があります。
もう一つの特徴は、密度が高いために熱を多く蓄える能力、つまり「蓄熱性が高い(熱容量が大きい)」という性質です。これは、物質が温度変化しにくいことを意味し、一度温まると冷めにくくなる反面、一度冷えてしまうとなかなか温まりにくいという特性にもつながります。
冬場においては、これら二つの性質が複合的に作用します。まず、外気温の低下が続くと、熱伝導率の高さによってコンクリート躯体そのものが外気の影響を受けて徐々に冷え切っていきます。そして、蓄熱性が高い(熱容量が大きい)ために、一度冷え切ったコンクリートはその「冷たさ」を長時間保持し、暖房を稼働させてもすぐには温まりません。たとえ室内の空気が暖められても、壁や床といったコンクリート部分から冷気が放射されたり、直接触れたりすることで「底冷え」として体感されやすくなるのです。
このように、コンクリートが持つ「熱を伝えやすく」かつ「多くの熱(あるいは冷気)を溜め込みやすい」という性質は、特に冬場において、一度冷えるとなかなか暖まらない状況を生み出し、マンション室内が寒く感じられる一因となります。
人が暮らす住宅などで室内の健全な空気環境を維持するため、2003年7月以降の新築住宅では24時間換気システムの導入などが義務づけられました。しかし24時間換気システムは当然ながら室内の空気を入れ換えてしまうため、シックハウス症候群などの対策になる反面、暖房器具などでせっかく温かくした空気を外に逃がしてしまい、冷えた外気を取り込んでしまうという問題があります。
そのため24時間換気システムは必然的に、マンションなどで寒くなりやすい原因の1つとなります。
ただし換気方式には複数の方式があり、それぞれで室温への影響が異なる点も重要です。換気システム自体は人の快適な暮らしを守るために大切なものなので、寒さ対策を考える場合は換気方式で調整するようにしましょう。
※参照元:国土交通省「シックハウス対策について知っておこう。」【PDF】(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/sickhouse.files/sickhouse_1.pdf)
個人が行えるマンションの寒さ対策として、まずは窓のカーテンを断熱性に優れたものへ変更することがおすすめです。室内の熱が逃げていくルートとして外気に面する窓ガラスは大きなポイントであり、断熱カーテンを採用することで室内の暖気を逃がさず部屋に止められるようになれば寒さ対策として効果があるかも知れません。
エアコンや暖房器具で部屋を暖めても、室内が広いと温かくなった空気が分散してしまい、体感温度はなかなか上がってくれません。そのため、間仕切りカーテンなどを設置して室内のスペースを小分けするといった対策も有効です。
なお暖かい空気は上に溜まりやすいため、間仕切りカーテンを設置する時は天井付近から垂らすようにしてください。
マンションが寒くなる大きな原因に、床が底冷えして暖かさを感じられないというものがあります。そのため、いっそ床にホットカーペットを敷いて電気の力で温めてしまうことは解決策として効果的です。
また電気代を節約したい場合は、毛足の長いラグマットや絨毯を敷いてみることもおすすめです。その他にもスリッパを使用するといった対策もあります。
個人で取り組める寒さ対策には限界があります。そのため、根本的にマンションが寒くなっている原因へアプローチし、それを改善させる方法として「断熱リフォーム」を考えることもできるでしょう。
断熱リフォームはマンションの壁や床に断熱材を設置して、住居としての気密性や断熱性を高める目的の工事です。つまり、物理的かつ直接的な寒さ対策となる上、特に断熱性能の低いマンションにおいてはリフォーム前とリフォーム後で体感的にも大きな変化を感じられるかも知れません。
ただし、マンションの断熱リフォームは戸建て住宅のように外壁を除去して断熱工事をすることができないため、室内の壁や床を除去してから断熱材を設置するという流れになります。また、マンションの断熱リフォームには大きく以下の2種類があります。
コンクリート壁へ下地を設けてから、発泡スチロールなどの断熱材をはめ込む施工法です。室内工事で対応できる上、コストを抑えやすくなっています。
湿式断熱は固形の断熱材を設置するのでなく、泡状の断熱材を大型コンプレッサーで吹き付ける断熱工事です。乾式断熱よりも気密性を高められる反面、対応可能な条件が限られており、コストも高くなります。
窓の断熱性や気密性を向上させる対策として、窓サッシを交換したり内窓(インナーサッシ)を設置したりするといった方法も効果的です。
そもそも自然界において特に優れた断熱材として機能しているものが「空気」であり、インナーサッシを採用することによって、外窓と内窓の間に存在する空気の層が優秀な断熱材として室内の温度低下を防いでくれます。
北国など冬場の温度が下がりやすい地域では標準装備で二重窓や内窓構造になっていることもあり、インナーサッシの設置は比較的簡単にできる断熱対策として有用です。
ただしインナーサッシのデメリットとして、外窓と内窓の間にホコリやゴミが溜まりやすくなり掃除の手間が増えるといった問題もあります。
窓ガラスへ断熱効果のある専用のシート(遮熱シート)を貼るといった対策もおすすめです。
遮熱シートの施工だけであれば断熱材を設置する断熱リフォームと比較しても小規模のリフォームで済むため、工期が短くコストも抑えやすいことがメリットです。またインナーサッシのように二重窓の隙間にゴミが溜まりやすくなるといった問題もありません。
課題としては、窓部分の対策となるため壁や床の底冷えといった問題は解決しにくいことと、遮熱シートを長期間そのまま貼り続けていると窓ガラスに接着剤や匂いが付いてしまうため、シートが劣化する前に定期的に張り替えなければならないといったものがあります。そのため都度、業者へ施工を依頼すると結果的にインナーサッシより高コストになる恐れもあるでしょう。
マンションの寒さ対策に断熱リフォームを行うに当たって、最初に根本的な寒さの原因を調査して把握することが不可欠です。
例えば、そもそも断熱材を使用されていないマンションでは抜本的な解決に断熱材の設置が必要かも知れず、逆に断熱性能が高いのに寒いマンションでは日当たりやエアコン性能など別の要因があるかも知れません。
加えて断熱リフォームは簡単に元に戻せない内容もあり、まずはマンションの断熱リフォームや寒さ対策に詳しいプロとして、信頼できる業者を探して相談することが大切です。また費用に関しても複数業者から合見積をもらって比較検討を行いましょう。
※参照元
日刊工業産業新聞公式サイト(2024.04.17付ニュース)(https://biz.nikkan.co.jp/sanken/shingizyutu/36shingizyutu.html)
※このサイトで紹介している会社は、Googleで2024年3月30日時点で「遮熱工事」で検索し表示される会社のうち以下の条件に当てはまる会社
➊遮熱工事の具体的な内容(遮熱材や工法の情報)が公式サイトに記載のある会社
➋施工場所の業務や工場の稼働などに影響のない工法(建物内ではなく「屋根の上」で行う工法)
➌同じ遮熱材・工法の場合、代理店は除外、自社が大元となって展開する商標登録元・特許技術取得元・販売元の会社12社です。
※その中で、特許技術取得、商標登録等されているオリジナルの工法(自社開発の工法)で、代理店の数や施工事例等から実績が多いと判断される会社を紹介。(上記の会社の中ではこの3工法となります)