工場で温湿度管理を行う理由や温湿度管理のポイント、安定した温湿度を保つためのポイントを詳しく解説します。
労働安全衛生規制では、労働者の健康や安全を守り、安心した環境で働けるよう衛生に配慮する必要があると定められています。そのため、工場内の温湿度の調整と測定を事業者に義務付けています。
事業者は、屋内の作業場が暑熱・寒冷または多湿の場合、有害のおそれがあるものについて、冷暖房や通風など適当な温湿度に調節するための対策を講じなければなりません。
また、多量の熱を放散する溶融炉などがある場合、ふく射熱からの保護も義務付けられています。加熱された空気を直接屋外に排出し、ふく射熱から労働者を保護しなくてはなりません。さらに半月以内ごとに1回など、作業場の気温と湿度、ふく射熱の定期的な測定が求められます。
※参照元:G-GOV法令検索「労働安全衛生規制」 (https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032)
温湿度管理は、工場で働く従業員の健康管理においても重要です。温湿度管理が不十分だと、従業員の健康に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
夏場に高温の工場で作業をしていると熱中症リスクが高まりますし、温湿度の低い工場の場合、インフルエンザやコロナウイルスなど従業員が感染症にかかるリスクが上昇します。
適切な温湿度の維持が従業員の健康を保つことにつながるのです。
快適な温度や湿度は人によって異なりますが、労働安全衛生法の「事務所衛生基準規則」では、空調設備がある屋内作業場では室温が18℃~28℃以下、湿度は40%~70%が適正であると定められています。
※参照元:G-GOV法令検索「事務所衛生基準規則」 (https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000043)
工場の稼働率や製品の品質を保つためにも温湿度管理は重要です。例えば食品工場の場合、温湿度が食品の品質に直結しますし、精密機器の工場においては、工場内部の湿度が高くなることで静電気の発生リスクが高まります。静電気の発生は精密機器に影響を与えてしまう可能性があるため、特に厳重な温湿度管理が必要です。
また、工場内の湿度が高すぎるとサビが発生しやすくなるため、工場の設備に影響を及ぼします。腐食による設備故障で稼働がストップすれば、生産稼働率にも影響が伴うでしょう。
製品を安定した品質で計画通りに製造する、設備トラブルを防ぎ生産パフォーマンスを最大化するためにも、常に適切な温湿度に保つことが重要です。
食品工場では、温度や湿度が高くなるとサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌、カンピロバクターなどの食中毒菌が繁殖しやすくなります。食品事故を起こさないためにも、食品の搬入、保管、加工を行うすべての場所での温湿度管理が必要です。
また、食品によって適した温湿度は異なります。それぞれに適した温湿度や調整方法を把握することも大切です。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」には、食中毒を予防するための食品ごとの適切な温湿度、調理方法が示されています。
マニュアルに基づいた衛生管理体制の確立と温湿度に関する点検・記録、必要であれば改善措置を講じることが大切です。
※引用元:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル(PDF)」 (https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000139151.pdf)
高温多湿の環境では、静電気やサビの発生リスクが高まります。静電気やサビは機器の品質に影響を及ぼすため、品質低下や不良品率の上昇につながりかねません。
精密機器や電子機器がある工場では、湿度が40%を超えないように管理することが大切です。
また、半導体や電子部品を使ったサーバーなど熱に弱い精密機器がある場合、機器の高温化による熱暴走や熱障害が起こりやすくなります。工場全体の機能が停止しないためにも、サーバールームなどの精密機器がある場所は特に注意しましょう。
温湿度の高い工場では、金属同士の摩擦やモーターの熱による部品の膨張や変形トラブルが起こりやすくなります。機械の誤作動や熱暴走のリスクも高まりますし、従業員が熱中症になるおそれもあります。
産業用機器や加工機械のある工場では、機械周辺や作業場が高温状態にならないよう、適切な温湿度管理をしましょう。機械から出る熱を遮断する、常に換気を行って周辺の温度を調節するなどの対策が有効です。
ボイラーや溶融炉などの熱源が近くにある、窓際からの直射日光が当たるなど、周囲からの侵入熱が多い工場では、空間内の温湿度管理が難しくなります。
外壁に断熱材を使用する、表面に断熱材を貼る、または断熱塗料を塗ると、侵入熱がこもりにくくなります。熱の侵入を防ぐ断熱板や遮熱板の設置も有効です。
保管庫や制御盤など、空間の気密性が低い場所は、隙間から高温・低温の空気が流れ込みやすくなるため温湿度の安定を妨げます。
空間や筐体の隙間をシールドやパッキンで処理するなど、気密性を上げると温湿度が安定します。
出荷のために運搬車が頻繁に出入りする、人の出入りが多い工場では、出入り口から外部の空気が流れ込み、温湿度の変化を引き起こします。
出入り口の開口面積を小さくする、出入り口の開放時間を短くするといった工夫で外気の流入と影響を最小限にできます。二重扉を設置して外気の流入を防ぐ対策も有効です。
空調設備の効果が弱いと、流入した外気の温度や湿度の影響を受けやすくなります。特に、全体空調を行っている工場の場合、外気導入を行うため、季節や雨天時など気候による温湿度の変動が大きく、管理が難しくなることがあります。
適切なダンパー調整や切り替え、外気導入率の調整など、季節や転向に合わせた調整と運用が大切です。
工場内には大規模な機械や設備をしているところが多くあります。こうした機械からの熱の影響も、温度や湿度が安定しない要因のひとつです。数量や納期など、生産条件の変化によっては温度や湿度が大きく変動しやすくなります。
稼働率がなるべく平準化するような生産計画を立てる、稼働率に合わせて、その都度空調や換気装置などを調整するといった工夫が効果的です。
日光が直接あたりやすい場所では、日射熱による影響が起こり、温湿度の安定が妨げられやすくなります。
遮光板や遮熱板を設置する、壁や天井に断熱材や断熱塗料を使用するなどの対策を講じましょう。
温度の高い空気は上へ行き、温度が低いと下に溜まる性質があります。エアコンをつけていても暑い、寒いと感じるのは、暖かい空気が天井に、冷たい空気が下に行くためです。
空間の温度を均一に保つためには、シーリングファンの設置がおすすめです。天井に設置すれば、シーリングファンの大きな羽がゆっくりと回転して空気を循環させ、天井と床付近の温度を均一に保ちます。
面積が広い工場の場合、全体空調で温湿度を管理しても、あまり効果を得られないケースがあります。作業場の快適性を高める対策として、工場内の空間にビニールカーテンを設置する方法があります。
一定の空間を仕切ることで空調効率が高まり、快適な室温を保てるようになります。
多くの機器を設置している工場の場合、機械から発せられる熱の影響で部品の熱膨張や変形、サビによる腐敗などのトラブルが起きやすくなります。
このような機械からの熱を防ぐには、機械に直接遮熱シートを設置する方法が効果的です。断熱シートで機器を包み込むことで機械から出る熱をカットできます。
ふく射熱を防ぐためにおすすめなのが、工場の屋根や壁に遮熱シートを施工する方法です。
夏は日射によるふく射熱を抑えて工場内の温度上昇を防ぎます。室内の熱が外に逃げるのを防いでくれるため、冬の寒さ対策にも有効です。
※参照元
日刊工業産業新聞公式サイト(2024.04.17付ニュース)(https://biz.nikkan.co.jp/sanken/shingizyutu/36shingizyutu.html)
※このサイトで紹介している会社は、Googleで2024年3月30日時点で「遮熱工事」で検索し表示される会社のうち以下の条件に当てはまる会社
➊遮熱工事の具体的な内容(遮熱材や工法の情報)が公式サイトに記載のある会社
➋施工場所の業務や工場の稼働などに影響のない工法(建物内ではなく「屋根の上」で行う工法)
➌同じ遮熱材・工法の場合、代理店は除外、自社が大元となって展開する商標登録元・特許技術取得元・販売元の会社12社です。
※その中で、特許技術取得、商標登録等されているオリジナルの工法(自社開発の工法)で、代理店の数や施工事例等から実績が多いと判断される会社を紹介。(上記の会社の中ではこの3工法となります)